- い
- I
い(1)五十音図ア行第二段の仮名。 五十音図ヤ行第二段の仮名としても重出。 前舌の狭母音。(2)平仮名「い」は「以」の草体。 片仮名「イ」は「伊」の偏。(3)「いろは歌」の第一文字。 仮名がしら。IIい(接尾)名詞または名詞的な語に付いて, 形容詞を作る。III
「四角~」「黄色~」
い(接頭)動詞に付いて語調を整えたり, 意味を強めたりするのに用いられる。IV「~行く」「~隠る」
い(終助)〔終助詞「や」の転。 近世以降の語。 主として男性に用いられる〕文の末尾に接続する。(1)念を押したり, 語気を強めたりする気持ちを添える。 多く「だい」「わい」「ない」の形をとる。「これ, ぼくのだ~」「いっぱい食わされたわ~」「むちゃをするな~」「早くしろ~」
(2)質問や反問の意を強める。 多く「かい」「だい」の形をとる。「何か食べるものはないか~」「なんだ~。 またこれか」「ほんとに君にできるか~」
(3)軽蔑や投げやりの気持ちをこめて, 言い返す場合に用いる。「なに言ってるんだ~」「勝手にしろ~」「ぼくにそんなことができるか~」
(4)(多く「いの」の形で)名詞に付き, 呼びかけの気持ちを表す。V「かか様~の, かか様~のと夜なか時分に泣いて/歌舞伎・傾城江戸桜」
い〔上代語。 平安時代には, 限られた経典の訓読にのみ用いられ, 院政時代以降は消滅した〕※一※ (格助)名詞・または名詞的な語に付く。 主格を強めて示す。「いは」「いし」などの形が多い。 「紀伊(キ)の関守~留(トド)めてむかも/万葉 545」
※二※ (終助){※一※}と同系の語。 活用語の連体形よりなる文節に付く。 語勢を強める。 ね。 よ。VI「玉の緒の絶えじ~妹(イモ)と/万葉 481」
い【イ】洋楽の音名。 欧語音名 A にあてた日本音名。 洋楽音律では, 通常440ヘルツのイを基準音とする。VIIい【五】ご。 いつつ。 多く他の語の上に付いて複合語として用いられる。VIII「~百((イオ))」「~十((イソ))」
い【五十】ごじゅう。 いそ。 多く他の語の上に付いて複合語として用いられる。IX「~日((イカ))」
い【井】(1)井戸。 掘り井戸。(2)泉や地下水をためた水汲み場。「安積香山影さへ見ゆる山の~の/万葉 3807」
~の中の蛙(カワズ)大海(タイカイ)を知らず狭い世界に閉じこもって, 広い世界のあることを知らない。 狭い知識にとらわれて大局的な判断のできないたとえ。 井の中の蛙。 井蛙(セイア)大海を知らず。Xい【亥】(1)十二支の一二番目。 年・日・時刻・方位などにあてる。 いのしし。 がい。(2)時刻の名。 今の午後一〇時頃。 また, 午後一〇時から一二時まで。 または午後九時から一一時までの間。(3)方角の名。 北から西へ三〇度の方角。XIい【伊】「伊太利(イタリア)」の略。XII「日独~」
い【位】助数詞。(1)等級・順位・位階などを表す。「第一~」「従三~」
(2)計算の位取(クライド)りを表す。「小数点以下第五~」
(3)死者の霊を数えるのに用いる。XIII「英霊五十~」
い【偉】大きくて立派であること。 すぐれていること。 また, そのさま。「高論寔(マコト)に~にして妙なり/慨世士伝(逍遥)」
~とするに足(タ)・る賞賛するだけの価値がある。 偉大である。XIV「~・る人物」
い【医】病気やけがを治すこと。 医術。 また, それを行う人。「~をもって世に尽くす」
~は仁術(ジンジユツ)(なり)医術は単なる技術ではなく, 人を救う道である。XVい【囲】両手を伸ばして抱えるぐらいの大きさ・太さを計るのに用いる。XVI「百~に余る大木/太平記24」
い【堰】「いせき(堰)」に同じ。XVIIい【夷】東方の異民族。 野蛮人。 えびす。~を以て夷を制す〔後漢書(鄧訓伝)〕異民族を利用して異民族をおさえる。 敵国をおさえるのに, 他国の力を利用する。 以夷制夷(イイセイイ)。XVIIIい【威】人をおそれ従わせる力。「虎の~を借る狐(キツネ)」
~ありて猛(タケ)からず〔論語(述而)〕威厳があってしかも荒々しくない。 君子の理想的な人柄をいう。~を振る・う勢威を示す。XIX「北陸に~・った武将」
い【寝】眠ること。 睡眠。「朝~((アサイ))」「熟~((ウマイ))」「真玉手玉手さし枕(マ)き股長(モモナガ)に~をし寝(ナ)せ/古事記(上)」
~を寝(ヌ)眠る。XX「家思ふと~ねず居(オ)れば/万葉 4400」
い【居】〔動詞「居る」の連用形から〕いること。 座ること。 また, その場所。 多く他の語と複合して用いられる。XXI「家~((イエイ))」「立ち~」「~もさだまらず/枕草子(四二・能因本)」
い【帷】垂れ幕。 たれぎぬ。 とばり。~を下(クダ)・す塾を開いて教える。〔漢の董仲舒(トウチユウジヨ)が, とばりを下げた部屋で勉強や後進の指導を行い, 三年間庭を見なかったという「史記(儒林伝)」の故事による〕XXIIい【彝】〔もと中国で, 常に宗廟(ソウビヨウ)に供えておく器の意から〕人の常に行うべき道。 常道。 常法。→ 彝器~を秉(ト)る〔詩経(大雅, 烝民)〕人の道を固く守る。XXIIIい【意】(1)心の働き。 思っていること。 気持ち。 考え。「~のままに振る舞う」「~に反する」「~を新たにする」
(2)意味。 わけ。「打ち消しの~を表す助動詞」
(3)〔仏〕 感覚を除いた, 思考などの心の働き。~余って言葉足らず言いたいことがたくさんあって, それを言葉で十分表現しきれない。~至りて筆随(シタガ)う〔春渚紀聞(東坡事実)〕感興のわくままに筆がすらすらと動いて, 優れた文章・詩歌ができる。~とする気にとめる。 意に介する。 多く打ち消しの語を伴って用いる。「多少の犠牲は~せず」
~に中(アタ)・る気に入る。 希望がかなう。「思を寄せ争つて其~・らん事を求むる者多し/花柳春話(純一郎)」
~に介・する気にかける。 気にする。 多く打ち消しの語を伴って用いる。「悪口などは~・さない」
~に適(カナ)・う考えに合う。 気に入る。 意に添う。~に染(ソ)まないその気にならない。 気がすすまない。~に満たない気に入らない。 不満足である。「~ない作品」
~のある所(トコロ)(言わんとする)本当の気持ち。 真意。「~をお汲(ク)み取り下さい」
~を受・ける人の意志・意向を承知して, それに従うようにする。「首相の~・けて訪米する」
~を得る(1)理解する。 わけがわかる。(2)思っていた通りになる。 満足する。「我が~得たり」
~を酌(ク)・む他人の考え・意見を肯定的に推察する。~を決・する決心する。 覚悟を決める。~を注(ソソ)・ぐもっぱら努力を集中する。 力を入れる。「後進の育成に~・ぐ」
~を体(タイ)・する他人の意志・意向を自分のものとしてそれに従う。「社長の~・して交渉に臨む」
~を尽く・す意見・考えを十分に言い表す。~を強くする心強く思う。 自信をもつ。「あなたの支持が得られて~しました」
~を迎・える他人の意見・意向に従って, 気に入られようとする。 迎合する。「大衆の~・える番組」
~を用・いる心を配る。 気を使う。 注意する。XXIV「社会福祉の向上に~・いる」
い【斎】古く神に関連のある名詞に付いて, 「神聖な」「清浄な」の意を表す。XXV「~垣」「上つ瀬に~杙(クイ)を打ち/古事記(下)」
い【易】たやすいこと。⇔ 難「難を先にして~を後にし/文明論之概略(諭吉)」XXVIい【汝】二人称。 相手を卑しんでいう語。 お前。「~が作り仕へ奉れる大殿の内には/古事記(中)」
〔格助詞「が」が付いて「いが」の形で用いられる〕XXVIIい【猪・豬】イノシシ・ブタの類の称。 特に, イノシシのこと。XXVIII「山口大菅原を牛は踏む~は踏むともよ民な踏みそね/琴歌譜」
い【異】※一※ (名)違う意見や考え。※二※ (形動)妙であるさま。 普通と違っているさま。「~に思う」
→ 異な~を挟(サシハサ)・む他人の考えや意見に疑問を出す。~を立・てる別の考え方のあることを述べる。~を唱(トナ)・えるその考えに反対である旨を表明する。XXIXい【移】律令制において, 直属関係にない役所間で取り交わす公文書。 末尾に「故移」または「以移」と記す。 移し文。→ 牒XXXい【緯】(1)織物のよこ糸。 また, 横。(2)緯書(イシヨ)。XXXIい【胃】(1)消化管の一部で, 食道に続く部分がふくらみ, 器官としての機能をもつもの。 食物を一時たくわえ, 消化を行う。 ヒトの胃は食道と十二指腸の間にあって一室から成り, 胃液を分泌して主にタンパク質を分解する。 鳥類では二室, 哺乳類の反芻(ハンスウ)類では四室に分かれる。 胃袋。「~がもたれる」
(2)二十八宿の一。 西方の星宿。 胃宿。 えきえぼし。XXXIIい【胆】胆嚢(タンノウ)。 きも。XXXIII「熊の~」
い【藺】イグサ科の多年草。 北半球に広く分布。 茎は高さ1メートルに達し, 節がない。 葉は退化して少数の葉鞘(ヨウシヨウ)が茎の基部につく。 夏, 茎頂に淡緑色の小花を密につける。 栽培されて茎は花筵(ハナムシロ)・畳表などの材料とし, 髄(ズイ)は灯心にした。 イグサ。 灯心草。 ﹝季﹞夏。 《~の水に佇めば雲流れけり/大橋越央子》XXXIVい【蜘糸】クモの糸。 クモの巣。XXXV「露にてもいのちかけたる蜘蛛(クモ)の~に/蜻蛉(下)」
い【衣】身にまとうもの。 着物。 ころも。XXXVI「~と食と住と」
お安くな・い男女の仲が特別に親しいことを, ひやかし気味にいう語。XXXVII「デートとは~・いね」
な・いラ行特別活用の動詞「なる」の連用形の音便の形および命令形。→ なる(動ラ特活)
Japanese explanatory dictionaries. 2013.